1-1―悲しみの筵

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しかし、その一方で、突然前ぶれもなく襲ってくる酷い偏頭痛にも珠樹は悩まされるようになっていった。近くの病院で診察してもらったところ、自律神経失調症と診断された。心身共々できるだけ穏やかに毎日を過ごすようにと医師からは伝えられたが、母も毎日忙しく仕事に出かけていたため、家の中の細々とした用事を母が帰ってくるまでにほどほどに終わらせておくことも珠樹の日課だったし、盲目の妹、彩菜と過ごすひとときも大切にしたいと珠樹は思っていた。  そんな折り、珠樹は当時通っていた中学校で所属していたテニス部の友人たちからの無言のいじめにも遭った。今迄親しく話していた友人を筆頭に自分を避けはじめた部員たちの冷ややかな視線と嘲笑の(むしろ)を気にしながらの失意のどん底のような日々が過ぎていった。珠樹は毎日の忙しさを言い訳に自分に対するいじめを黙認し、自分の心を闇雲に押し殺すようにテニス部を休むようになった。
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