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「ジントニック―お待たせっしたー!」
「あれ? ジントニックじゃないです。ジンライムです」
「へ? あーー、すみません。間違えましたー! 直ぐ持ってきまーす!」
それからは当たり障りのない楽しい会話に徹し、気持ちよく解散した。
いつもより深酔いなのがバレないように。
週末の金曜日、明日は休み。
直ぐに帰る気にはなれず、馴染みのバーに向かう。
自分でも理解不能な人恋しさ。
誰かと一緒にいたい。
実家にいる可愛い子どもたち……いや違う。
この空虚感はあの子達では埋められない。
恋人など数年間いないけれど、そういう事だろうか。人肌恋しい的な。
「……馬鹿馬鹿しい」
いろいろ考えていたら可笑しくなってきた。寂しいとか、なんでこんなことを考え始めたんだ──。
酔っ払いがへらへら笑みをうかべながら、目的の店の前に着いた。
「止めてください!」
「……」 なんだ?
揉めてる。
少し、夢と現実の境界線が曖昧になってきている。
「いいよ八重嶋さん、早く行こう」
「ねぇねぇ、そんなつれない事言わないでさぁ、一緒に飲もうよぉーー」
三人の女性が、チャラチャラした男三人に絡まれているのがわかる。
女性グループは無視して先を急ごうとしているのに、逃げ道を塞がれている。
「いい加減にしなよ君たち。私らもう帰るところだから」
「だーーから。一杯だけ! おごるしー」
「しつこいんだけど」
「い、一華ちゃん、いいから」
イチカちゃん?
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