牙を持った王子様

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牙を持った王子様

 いつから僕たちの関係はこうなっていただろうか。思い返してみても、心当たりはない。グラデーションのように変わっていった僕らの関係はややこしくて、なんと呼べばいいのかわからない。  ただ、僕は今のこの状況はいただけなかった。 「(れん)、降ろせ」  彼女の耳元に口を寄せて消え入りそうな声で囁いた。 「ん、何か言った? 真生(まお)」  なんとか振り絞った声は彼女に届いていないようで、僕が俗にいう「お姫様抱っこ」から抜け出すことはできなかった。  ただでさえ人が廊下にあふれかえるこの時間帯にこの醜態をさらすとは本当についていない。くすくすと笑う声や配慮もなく「お前らって王子と姫って感じだよな」といった野次が聞こえた。あぁ、もう。怒る気は起らなかった。不可抗力と言えば不可抗力だった。
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