十五話 任務決行2
「敵……くる。」
先頭をいくアサシンがそう呟く。
「来るなら来い!」
タチアナは背中に背負った剣を抜き、
構える。
それが戦闘開始の合図のように洞窟
の奥から角の生えた小さな鬼のような
魔族が飛びかかってくる。
「サンダー!」
俺の隣にいた魔法使いが
雷の魔法を魔族目掛けて打つ。
「おぅら!」
戦闘系の職業であろう屈強な
男達も槍や剣を振り回して、
鬼たちを倒していく。
「1000連弾!」
中衛からはマシンガンのように、
射撃を開始する者たちもいた。
うまく連携がとれているからか、
現時点では回復魔法士である俺の
出番がない程に怪我を負う人は
いなかった。
「ふぅ……こんなものか……。」
「案外呆気ないな。」
さっき気を抜くなと注意された
はずの男らが、楽観的な声をもらす。
「敵……大型……来る!」
すると、またもやアサシンがいち早く
敵の襲撃を察知する。
「グゥアアァァ!!」
狼のような獣に首輪をつけた
2、3メートルはありそうな鬼達が
奥からぞろぞろと出てくる。
「1000連だっ――」
射撃職業の一人が銃を構えると、
鬼の一匹が狼に合図をおくる。
すると狼は物凄いスピードで射撃職業の
人に噛み付く。
「うわっ! はなっ! いっ!
だ、だれか! こ、こいつを……!」
「おうらっ! 無事か?」
「あぁ……助かった……」
噛み付いていた狼を戦士の一人が
吹き飛ばす。
やっと俺の出番が出たと、魔法を
使おうとしたが、俺より先に二人の
回復魔法士の上級職業である
魔法医師が治療を始めてしまった。
いや、いいんだけどね。
俺の出番無くても。
でもこれだと俺、今回の任務で
小便漏らしただけの男に
なっちゃうからね? いいのね?
「石火気烈!」
俺がそんな馬鹿なことを思っていると、
俺の小便シーンを見ていた彼女は何やら
光の速さで移動し、敵を切り捨てて
いた。
これが帝国精鋭隊の力かと、
誰もが驚嘆していた。
「皆、わたしの部下との合流場所
はもうすぐだ。
それまで頑張ってくれ。」
強敵を目の前にしても臆することのない
彼女の姿が、みんなの心を励まして
いるようだった。
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