十七話 ヘルドラ
暗闇の洞窟の中をランプで
照らしながらタチアナ達は進む。
「本当に良かったのですか?」
アルナという女性の騎士がタチアナに
尋ねる。
「あぁ……捜索にあんなに多くの人数が
いては不効率だ。
それにあそこにいる方が、
洞窟内を歩き回るより安全だろう。」
「しかし、皆どこに行ってしまったので
しょうか……」
ビルメという貧弱そうな男がそう呟く。
「私が直々に鍛え上げた騎士達だぞ?
そう簡単にやられる訳がない。
心配しなくてもすぐに会えるさ。」
「あぁ…そうだな、すぐに会えるさ。
あの世でな。」
突如不気味な声が洞窟内に響き渡る。
「剣を抜け!」
タチアナがビルメとアルナに命じる。
「誰だ!?」
タチアナはランプをかざし、遠くの暗闇に
叫ぶ。
すると、暗闇の中に炎の光が二個、
高い位置に照らされる。
「我が名はヘルドラ。
魔族の幹部である。」
ヘルドラの名乗りと同時に
あたりに設置されていた
ランプに日が灯り、洞窟内が照
らされる。
「お前が……ヘルドラ。」
タチアナ達はいつの間にか広い空間に
たどり着いていたようで、そこには
ヘルドラという二本の角の生えた
鬼のような巨人がいた。
「ようこそ、俺の住まいへ。
わざわざ俺の家に帝国精鋭隊
の一人がどのようなご要件で?」
「御託はいい。
私はお前を殺しに来たのだから。」
「おぉ、そうかいそうかい。
なら……やってみな!!」
ヘルドラは雄叫びを上げると口から
炎を吹き出す。
「アルナ、ビルメ。お前たちは
やつの注意を引け!」
「了解!」
アルナとビルメは互いに逆方向に
走り出す。
「逃げてんじゃねぇよ!」
それを追うようにヘルドラは炎を
吐きまくる。
「疾風迅雷!」
タチアナは雷を剣にまとい、
注意が散漫になったヘルドラに
突進する。
「がっ!」
それをヘルドラは間一髪で角で
受け止めるが、タチアナは剣を切れ込
ませたまま自身はヘルドラの顔
に飛び乗る。
そしてすぐに、懐から短剣を取り出して
目に突き刺した。
「ああぁぁぁぉぁあ!!!」
ヘルドラの悲鳴が上がる。
「アルナ、ビルメ!」
タチアナが合図をすると、二人は
追い打ちをかけるように
倒れたヘルドラに飛び乗り、顔をめがけて
走り出す。
ヘルドラが痛みでそれに気づかないで
いると二人はもう一方の目を
残虐に斬る。
「ぐあぁぁぁぁ!!」
再びヘルドラは痛みに苛まれる。
そうこうしているうちにタチアナは自身
の剣を回収し、三人は地面に着地した。
優勢、いや、一方的といっていいほどの
戦いだった。
「フハッフフフ、フハハハ!」
だが、ヘルドラは傷ついた目から
手を離し、不気味に笑い始める。
「何がおかしい。」
タチアナがヘルドラに問う。
ヘルドラは依然として笑っている。
そして、笑い終わると大きな声で
こう叫んだ。
「出ててこい! 俺の兵士よ!」
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