十九話 服部隼人2

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十九話 服部隼人2

「私の物になりました。」 ラーバはそう言うとニヤニヤ笑う。 「物? どういうことだ。」 「先程の私の技をかわしたご褒美 に今からそれを見せてあげましょう。 さぁ、起きなさい、私の下僕達。」 ラーバは子供を起こすかのように、 手を叩く。 「ぅ……ぅ、ぁ……」 すると先程、ラーバの吐いた煙を 吸い込んみ倒れた仲間がゾンビの ようにうめき声を上げながら 立ち上がる。 「生き物を操る能力か、なんかか?」 「これまたご名答。 私は私が吐く息を吸った生き物を 操ることができるのです。 そういえばさっき、あなた達以外に 三人の人間がヘルドラさんの部屋に 向かっていましたね…… 今頃は、私の物となった自分達の 仲間と戦っているのではないでし ょうか。あ~愉快、愉快。 早く私も見物に行きたいものです。」 「私だ! タチアナだ!    聞こえないのか!?」 タチアナは亡者となった自分の部下に 必死に話かける。 自分は傷を負いながらも、決して 仲間である部下に血を流させることなく。 「ハハッ、無駄だ。どんなに話しかけ てもそいつらはお前らのことなんか忘 れてる。なぜなら、そいつらラーバ の呪術にかかってんだからな。」 両目が見えなくなっても、タチアナ達が 自分の騎士に苦戦しているのは わかっているようで、必死に 救おうとする彼女達をあざ笑う。 「ら、ラーバってあの……?」 アルナがそれを聞いて驚愕する。 「何故、幹部がもう一人ここに……。」 さすがのタチアナも少し、動揺し たようで、ヘルドラはそんな彼女らの 反応を聞いてますます笑った。 「ということなので、私は 早くあちらに向かいたいのです。」 ラーバは右手を上げる。 「ですからあなたには、ここで 私の物となってもらいますよ!」 そして言い終わると同時に、 敵の下僕と化した俺の仲間に 上げた手を振り下ろして号令 をかけた。 特に仲良くなった訳では 無いがさっきまで協力していた 皆が俺に襲いかかってくる。 アサシンや戦闘タイプの職業の人間が 俺を殴ろうとしてくるが、俺はそれを ひらりとかわし、体勢を崩した者から 順に腕を掴んで死なない程度に壁に ぶん投げる。 「な……気は確かですか? この人間達はあなたの仲間ですよ?」 俺の無慈悲な暴行にラーバは困惑する。 「俺は回復魔法士だ。 お前を倒してから治す。」 「回復魔法士……? まさか……そんなわけ……。」 俺が戦闘職業でもないのに、 下僕達を次から次へと倒していく 異様な光景を前にラーバは一歩、また 一歩と後ずさる。 「やれ! 捕らえなくていい! あの人間を粉々にしてしまいなさい!」 何か危険を感じたのか、ラーバは 咄嗟に後衛にいた射撃、弓、魔法使い の職業者に命令する。 彼らはまるで人形のように俺に 銃や攻撃魔法を乱射してきた。 「ハハ……ハハハ! いやはや、惜しいですね。 大人しく私の物になれば無事で いれたものを。」 「何がだ?」 「ひっ! まさか……ありえない……」 ラーバが驚くのも 無理はない。 なんせ俺は洞窟が地震のように揺れる 程の攻撃を傷一つ受けることなく、 耐えきったのだから。 まあ、レベル999なんだから当然な のだが、ラーバにはそれが相当こたえた ようで先程の余裕っぷりは微塵も感じ られなかった。 俺はそれにとどめを刺すかのようにこう 言った。 「お前がまず最初の獲物だ。」
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