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ぺらり、とページが捲られる軽い音が手元で鳴って、懐かしい、と思う。計算問題が等間隔に印字されている数学のテキストを眺めながら、響は隣から聞こえるシャープペンシルの筆記音を聞いていた。視線を机に落とすと、学人がノートに向かって懸命に計算式を書き付けている。
食事を終えた後、勉強するならと響が連れてこられたのは施設内の自習室だった。六畳ほどの広さに長机が田んぼの田の字の空白のように並べられている。子どもたちにわからないことを教え合って勉強してほしいという意図で作られたらしいが、当然率先して勉強したがる子どももおらず、今はほとんど使われていないらしかった。
現在も、消しゴムをかける音がはっきりと聞こえるくらいに部屋には静寂がもたらされていた。問題を解くのに集中している学人から視線を外し、斜向かいの机に目を向ける。そこには翔が頬杖をついて座っていた。彼も机に問題集を広げているが、常に視線を感じるので目的はほぼこちらの監視のようだった。
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