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砂利が少年に踏み締められる音に二三歩遅れて、青年に蹴られ、どこかに飛散する音が交差する。
もう日が暮れかけていた。墓石と二人の影だけがそのシルエットをはっきりさせている。空は裾を鮮やかな蜜柑色に染め上げ、上空の青は夜を孕んでくすんでいた。
しばらく二人は言葉を交わすことなく、砂利が沈黙を掻き乱す音だけを響き渡らせながら歩き続けていた。すると、少年がある墓の前で立ち止まる。青年は彼の歩みが止まったことに気付いた途端、いっそうぎこちない足取りになった。
それから長い時間を掛けて、何かを躊躇うように、抗うように、彼は砂利を遠慮がちに鳴らしながらやっとのことで少年の隣に並んだ。
「大丈夫?」
少年が呼び掛けても、彼は黙っていた。答える余裕もなさそうに俯いて、ゆるゆると煙が立ち昇る線香の先を昏い瞳に映すばかりだった。まるで暗示でもかけられたかのように身を固くして、赤い火玉を見つめている。少年は様子を窺いつつも、墓に向き直って語り掛けた。
「兄ちゃん、久しぶり」
墓は何も答えない。黒ずんでいく空を背負ってただそこに佇んでいる。少年は隣にいる青年をちらりと見やりながら続けた。
「紹介したい人がいるんだ。俺の、新しい家族」
少年の手のひらが促すようにそっと青年の背中に添えられる。青年は目を閉じて、深く息を吐いた。それから拳を握り締め、覚悟を決めて顔を上げた。
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