【24歳 初夏】

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   *  雨は先ほどよりも激しくなって、雨音が薄暗い部屋を埋めつくしていた。  響は一人、流し台の前に佇んで、使い終わった皿を一枚一枚丁寧に洗っている。  蛇口をひねると、水の音が雨音を蹴散らすように吹き出す。流れ落ちる雫を手でいなし、最後の皿を水切り場にそっと置いた。蛇口を閉めると、静寂にまた雨音が戻ってくる。響はゆっくりと手を拭いた。  ガコン、水道管が開く鈍い音がして、風呂場に続く扉から細やかにシャワー音が聞こえる。音の居場所を微笑みながら一瞥して、響は食卓に向かって歩き出した。  雨音に包まれた部屋を音もなく歩いていく。  そして、乾いた音を立てて引かれた椅子に座る。目を瞑り、小さく息を吐いてから、ゆっくりと顔を上げた。
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