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テーブルを挟んだ目の前に、明が立っていた。
示し合わせたように轟音が鳴り、明の姿を光が鮮烈に照らす。右半身は黒々と影に覆われ、左肩の赤が脅迫的に雷光に浮かび上がった。
呼吸は乱れ、響の顔はいっそう青白くなっていく。
鼓動が、散らばる。響はもはや耳の奥で鳴り響く音が雨音なのか自分の鼓動なのかわからなくなっていた。
明の顔からはあたたかさが消え、元の冷たい無表情に戻っている。突き刺すように暗い瞳が響を責め立てる。
それでも、響は彼の視線から逃れようとはしなかった。真正面から受け止めて、震える両手を握り締める。
「……分かってる」
体中から覚悟を絞り出すようにつぶやいた。
わかってるから。
繰り返す言葉に涙が滲む。必死に押し戻そうとしても、大粒の涙が嗚咽とともに零れ落ちていった。
もう、明を見られなかった。
テーブルに蹲って、響は静かに肩を震わせる。雨はまた強くなって、打ちつける雫が容赦なく窓を濡らしている。どこかで、遠雷が鳴っていた。
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