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「まだか?」 「ちょっと待ってよ~。いっぱいあって迷うんだもん」 「お前オレンジ好きだからそれでいいだろ」 「もう! 翔やんは口出ししないで!」  はいはいと返事をすると、光は再び真剣にラックを覗き込み始めた。こいつは悩み出したら長い。ひとつため息をついて、店内を見回した。しかし、意外と広いんだな。  三店舗分の敷地をぶち抜きで使われている店内は、ギターが奥の壁に吊り下がり、入り口付近からフロアの中央辺りまでアップライトピアノやドラムセットがずらりと並べられていた。向かって右側には短い階段を登る中二階があり、楽譜コーナーが設けられている。さらにレジ横には金管楽器が厳重そうにショーケースに収められていた。そして、今俺たちのいる位置はギターが吊り下がった壁際、店の最奥だった。この位置からでは入り口までは把握できない。まだ来ていないようだが、兄貴は探せるだろうか。とにかく早めにケリをつけておこうと、光に向き直る。
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