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 その時、ポロン、ポロン、と零れ落ちるようなピアノの音がどこからか聴こえてきた。  ドドソソララソ、ファファミミレレド。  一音一音を確かめるようにゆっくりと弾かれるきらきら星。  ソソファファミミレ、ソソファファ。  滑らかに奏でられていたメロディが、次に来るミの音で出遅れ、たどたどしくなって、でもすぐに元の調子を取り戻す。その危なっかしい旋律には聴き覚えがあった。  小躍りしながら紙袋を開けている光を置いて、音を辿っていく。案の定、そこにはピアノを弾く兄貴の姿があった。いつも猫背になっている背中は、針金が通ったようにしゃんと伸びている。あの頃から変わらないなと心の中で笑いながら、俺は兄貴に声を掛けた。
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