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【24歳 夏】
踏み締めた砂利が耳障りな音を立てて、沈黙を埋めていた。墓石の間に作られた小道を進みながら、時折来た道を振り返りつつ、それでも迷いのない足取りで少年が歩いている。その後ろ――三人分離れた距離――から先行く少年の靴音を頼りに、青年が重い身体を引きずるような足取りで同じ道筋を辿っていた。青年の息遣いは荒く、顔からは血の気が引いていた。項垂れ、鼻や顎の先から大量の汗が滴り落ちる。
「兄貴、ほんとに大丈夫?」
心配そうな声が降ってきて、青年はゆっくりと顔を上げた。数歩先で立ち止まった少年が青年を見下ろしている。
「……大丈夫」
遠くに聞こえる蝉の合唱にも掻き消されそうなほどか細い声で、青年は吐息混じりに答えた。言葉とは裏腹に、微笑みかけた口角が引き攣って辛さを露わにしている。
「あんまり無理するなよ」
少年が怪訝そうに言うと、青年は困ったように笑って、
「ごめんな」
とつぶやいた。
少年は心配の色を見せつつも諦めた様子でため息をついて、再び小道を進み始めた。青年も自分を奮い起たせるようにゆっくりと深呼吸をして、再び後を追う。
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