顧  恋

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国文学研究の僕の部屋に 大学院生として君が残ると 言ったのは五年以上も前。 僕はとても嬉しかった。 まだ大学生だった君。 利発な顔立ち、気の利く発言・・・ いや・・・理由なんか・・・ 僕は恋したんだ・・・、 半分の歳の君に・・・。 妻はもちろん、君にだって 気づかれてはならないから いつも顔がほころびそうなのを 堪えるのが大変だった。 それも今日限り・・・。 君は明日からいない。 「大学をやめて結婚することに  なりました」 高校時代からの彼について 遠くの町へ行くのだと・・・。 君がそう言ってからの三ヶ月・・・。 僕は毎晩酒場通い。 泣きそうな顔を 妻に見られたくないから 酔って誤魔化してから帰る。
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