残  照

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それから四十年・・・ 「坂井法律事務所の坂井と申します。  灘島百合子さんの代理で連絡を  させて頂きました」 そんな唐突な電話を ある朝、母が受けた。 「え・・・死んだ・・・?  死んだって・・・義妹が?」 その言葉に縁側の祖母も テレビを視ていた父も私も ・・・みんな、静止、 空白の四十年の次には  - 亡くなりました - 何が何やら解らぬままに 病院へ駆けつける・・・ 死亡手続きをする・・・ 家に運んで・・・ 彼女の生家である我が家の 座敷、祖父の仏壇の前に 寝かせたら・・・ 祖母は崩れるように 傍らに座り込んで 「アホな娘・・・アホな娘や・・・  こんな格好で・・・帰るなんて」 ポロポロと涙を溢した。 縁側の硝子戸から 祖父の可愛がっていた紫蘭が 祖母の肩同様震えているのが見えて 涙が誘われた・・・。
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