刹那の花

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飯と仮眠で一週間は 瞬く間に過ぎた。 廓に居続けの金は 同僚が政府から調達。 書類を取りに来る同僚の 左腕の包帯に気づいた。 「軍の連中にやられたのか?」 「本気で刺してきやがった、  ハハハハ」 「俺も次に東京へ帰ったら  命はないかもな」 「内地にいたって戦争だ。  しかも日本人同士」   同僚はしばし酒を愉しんで 東京へと帰って行った。 「お食事になさいますか?」 襖を開けてゆきはなが入った。 「そうだな・・・いや、  ちょっと眠ろうか・・・」 「それなら床を」 押し入れに向かいかけた ゆきはなの手をとった。 「お前の膝を貸してくれ」 座布団を並べて ゆきはなの膝枕。 痩せて薄い"枕"だが 一仕事終えた身体に心地好い。 伸ばした足先に分厚い袋。 そこには仕事への報酬が 入ってあった。 「しばらく東京へ戻ることに  なったんだ・・・。  ・・・一緒に来ないか?」 報酬は、ゆきはなを身請け、 自由に出来る程の金額。
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