刹那の花

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「ただ・・・ただ、  あの人が無事に、  生きて日本へ帰って  くれさえすれば・・・  それで構いません。  それさえ、判れば・・・」 「無事が判れば、男の元へ」 「こんなに"汚れて“  ・・・しまいました。  もう顔も見せられません。  でも、あの人の無事は  知りたいのです」 「廓にきたことは  お前のせいでは  ないじゃないか?」 ゆきはなは身体を起こして 泣き濡れたの顔のまま 「理由はどうであれ・・・  あの人に愛された私は  もうどこにもいません・・・」 そう言って、無理に笑った。 「だったら、俺のとこにいても  男の無事くらいなら確認」 話す途中からゆきはなは 何度も首を左右に振って 「それではあなた様に  申し訳がたちません。  他の男を想う女に  あなたが命を削って  作ったお金を使って  戴くわけには参りません。  詳しい事情は解りませんが  大変なお仕事をされて  いるのでしょう?」 こういう女を・・・ 不器用と、切ないと 呼ぶのだろう・・・。 「俺を利用すれば・・・  いいじゃ・・・ないかぁ」 らしくもない涙声に 自分でも驚いた。
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