刹那の花

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(利用されてもいい) そんな考えが出るくらい ゆきはなに惚れてるのか・・・ 俺は自分が滑稽で、憐れで・・・ 遣りきれなくて部屋を出た。 いつもの庭に廓の息子・ 直嗣の姿が。 「明日は雪が積もるかも」 言われてみると風花に気づく。 「冬だな・・・」 呟いてから (俺の心も真冬だ・・・) 感傷的になってしまった。 「・・・日本も真冬ですね・・・」 直嗣がぽつり。 「真冬か・・・そうだな・・・」 そう曖昧に返したけれど (真冬はこれからだろう・・・) ふと不安が、感傷を上回る。 どの国も、自国の権威のための 新しい兵器に躍起になっていた。 (そんな兵器の試し打ちに  日本がなってしまったら  国民は・・・ゆきはなは  どうなる・・・・・) やはり、どうしても ゆきはなを守りたい気持ちから 「俺は明日から東京なんだ。  俺が帰るまでの間、ゆきはなを  “借り上げる"から金を  父親に渡して貰えないか?」 直嗣にゆきはなを頼んで おくことに決めた。
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