刹那の花

14/25
前へ
/485ページ
次へ
汽車の中での長い時間、 手紙を読み返して頭の中を整理。 終戦前の空襲では皆、無事。 ところが春先から流行った 癖の悪い風邪が蔓延、 廓の女が一人と直嗣の両親が 深患いで死んだらしい。 感染していたゆきはなも 一進一退であったのが 9月くらいから急変、床についた。 俺に知らせなかったのは ゆきはなが止めていたから、 『これ以上の迷惑は心苦しい』と。 夏前に廓は廃業して 持ち物の長屋へ移動、 一軒を飯屋にして 女達は生計を立て ゆきはなの面倒も 皆が看てくれていると。 それだけは安心出来たが、  『恐らく冬までもちません』 手紙の一行が刺さった。
/485ページ

最初のコメントを投稿しよう!

327人が本棚に入れています
本棚に追加