刹那の花

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夜明け・・・・ 烏が一羽哭いて ゆきはなに引導を渡した。 二十年ばかりの生涯が 露と消えた悲しみに 俺は力が抜けていた。 直嗣や女達、それから 同僚まで加わって 小さな葬式の準備。 ゆきはなは白無垢と共に 浄土へ旅立ってしまった。 ゆきはなの遺骨は とりあえず、直嗣の檀家寺へと 預けられ、 「とにかくもう一度お身内に  手紙を書いてみます」 直嗣はそう言った。 (また無視か、あるいは  身内も東京空襲で死んでるか  ・・・"芳介“と言ったか、  その男だってどうなってる  ことか・・・帰還していても  廓に堕ちた女など、迎えに  くる道理なんて・・・・) なんだか気分が棘のように なったまま、俺は、同僚に 連れられて東京へ帰った。 しかし、一年近くののち、 俺は奇跡の連絡を 直嗣から受けることになる。
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