刹那の花

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ゆきはなの遺骨を預けた寺の 住職に要望して ゆきはなの待ち人・芳介が来る日、 俺と直嗣は本堂の隣室にいた。 廓の主の息子や馴染み客なんぞに 会いたいわけもなかろうし、 ゆきはなも望まいだろうから 判らぬように、障子を隔てて じっと潜んでいた。  「彼女の許嫁、尾上芳介です」 本堂に響いた澄んだ声、 丁寧なる挨拶、乱れない姿勢。 彼女の選んだだけの人物だった。 ゆきはなの身の上に 涙を流していたのは 芳介に同行した彼の戦友の妻と母。 芳介はじっと住職の話を 聞いていたけれど ゆきはなが遺した自分の、 芳介の似顔絵を前にして 背中が震えているのが 破れた障子の穴から見えて 恋敵ではあるけれど 胸がつかえて切なくなった。
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