刹那の花

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「今日の夜行列車で東京へ  お戻りになるそうですよ」 住職から聞いた列車の時刻。 俺はどうしても 未練が絶ち切れずにいたから やはり、駅へと、ホームへと わざわざやってきて 紫の風呂敷に包まれて 芳介に抱かれるゆきはなを 少し離れてじっと見ていた。 まったくの片恋だった・・・。 背広を掛けて笑ってくれたのも 書き物の途中で茶を入れて 笑ってくれたのも すべてすべては客の俺だと 何度も自分に言い聞かせたけれど、 ゆきはなに俺は惚れていた。 しかし、ゆきはなはもういない。 “響子"に還って、 待ち焦がれた男に抱かれて 今、花嫁道中をゆくのだ。 やがて列車がやって来て 定刻通りにホームを離れた。 俺は子供みたいに涙で 顔を汚しながら・・・・ 堪えきれずに名を呼び続けた。  「ゆきはなァ、ゆきはなぁぁぁぁ」            ー 了 ー   *short集なのに長くなって    しまって申し訳なし(ToT)    読んでくれてありがとう    ございました。この話の    “芳介version“が別冊の    『霖、止ます』です。    宜しければ読んでみて    下さい(* ̄∇ ̄)ノ    次回『花泥棒』は    『ひとりぼっち』、    ~なんで不倫ばかりなの     私って(*ToT)~    です。お楽しみに❗
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