罪 と 罰

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夕暮れ前・・・・・ 美春が退室すると 「あっちは弁護人に  松堂優子が立つようです」 事務官が難しい顔。 状況的に美春は執行猶予、 いや、優子なら無罪を 勝ち取るだろう。 松堂優子は“この手”の どちらが被害者であるかを 考えさせられる事件を 見事に片付ける弁護士だ。 “状況”に“情況”を織り込み 聴衆を納得させることに 素晴らしく長けている。 “遺体損壊”も見事に 被告有利に展開させるだろう。 「松堂さんでは勝ち目は  ない事件だわ・・・ふふ」 「珍しいですね、始めから  敗北宣言なんて・・・」 いつもの強気の私でないから 事務官は訝しそうに 首を傾げたまま、 「休憩を戴きます」 部屋を出た。 勝ち目がないというか・・・ 恐らく、私は、この件から 美春の事件からは降ろされる。 いや、降ろされるというより 明日にも辞表を書いて 検察庁を去ることになる・・・。
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