南天映燭(なんてんあかりにはえる)

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次の日、会社の廊下で  「これ、昨日の鉢植えの横に   似合うかと思って・・・」 そっと小さな箱をくれた貴方。 顔を火照らせながら 化粧室に駆け込んで 箱を開けたら、小さな猫の陶器、 鉢にぶら下がるように 手が伸びていて、細く笑った瞳が 胸を甘く刺した。 御礼に煙草を一つ、また次の日。  「よく覚えてくれてたね」 植木市の日・・・ カフェの外庭で貴方が 燻らせたウインストンは 紫の煙が綺麗だった。 それから食事に誘われて 休日には伊豆へドライブ。  「休みの日に出掛けたりして   その・・・“おうちの方”は   ・・・大丈夫・・・   なのでしょうか・・・・」  「問題ないよ、うちは互いに   あまり干渉しないんだ」 貴方はあっさり言ったけど その頃貴方が自由に出来た訳を 知ったときには・・・   貴方のいない暮らしには 戻れなくなっていた。     
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