パウダールーム ①

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着替えのシャツを羽織り、 ボタンを留める手が 湿った肌を撫でた。  「透き通るようだよ」 “初めての男”は 一緒に風呂に入るたびに 自分の浅黒い肌と並べて 美沙の肌を褒めた。 父親の後輩である“この男”は 製菓会社の社長で 頭脳明晰のやり手。でも 家庭人としては真面目で 有名な男だった。  「遊びが目立つようでは   粹ではないし、第一、   容姿や仕草で、女の善し悪しを   図るほど、真否の判らぬ   男ではないよ、僕は」 そう言った男は、 美醜を気にして、鋼鉄のような 装いと表情の美紗の 蕾を咲かせた相手。 彼の胸元に、自ずと漏れる吐息が 燃えた二十五歳の春だった。
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