パウダールーム ①

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「五時には会社へ戻らなきゃ」 美紗は着替えする手を早めた。 (“あのひと”・・・   『まだまだ』って  身体を離さないんだもの) さっきまでの男の重みが甦る。 “あのひと”は妹の夫で一哉の父親。 経産省勤めのこの男は 会社のために、一哉のために それから今後の美紗のためには 最重要な存在。 (妹は愚か者だから、一哉が跡を継ぐと  何も考えずに会社を“私物”に  して、経営にも口を挟むはず) それを阻止するには その夫を手中にしておく必要が 美紗にはあった。 もっとも・・・ 妹の大切な男が二人して “私物”であることも 美紗には大切な優越感で あるのだけれど・・・。           ー 了 ー
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