硝子の部屋

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「素敵な花を生けてくれて  ありがとうございます」 そう言いながら佐久間は 作業の合間にやって来るように。 「御礼に食事を」 ホテルのディナーに招待してくれた。 ディナーなんて・・・ 正直、そんな言葉に無縁の 夫婦共働きの庶民の我が家。 同じクラスの御嬢様育ちで 有名な子に、洋服を借りて ついでに化粧もしてもらって ディナーに出掛けた。 その夜は、アレンジメントの先生も 一緒だったから 大人の仕事の話に頷きながら食事。 ただ、夜景と初めて口にする食材に 無言で驚いていた。 佐久間が私に話しかけたのは 先生が電話で中座したとき。 「綺麗なレモン色のワンピースだね。  それに、ブレスレットも  華奢な手首によく似合ってる」 褒めてくれる佐久間の声と 優しい瞳に安心して 「コレ、全部借り物なんです、  今夜はシンデレラ気分、フフフ」 つい、本当のことを言って笑った。
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