硝子の部屋

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家に着いたのは九時前。 「晩御飯は?」と問われて 咄嗟に返答した「ハンバーガー屋」。 ほんとはハンバーガーではなく ハンバーグ、しかも一皿が 八千円もするステーキハウス。 母が用意してくれていた 筑前煮から思わず目を逸らせた。 風呂に入って、自室へ戻り 鞄を開けると、綺麗に整理された 英単語のプリント。  「過去問題から、自分で単語を   抜き出して整理しないと   キチンと頭には入らない」 から始まって、英語勉強方法が ズラリと書き記されてあった。 (あんなに短時間で  これだけのことが  出来るんだ・・・) ホテル経営では注目の 若手実業家であった佐久間なら これくらいは簡単な作業なのだが 当時の私には驚きで・・・しかも 「今日の記念に」 そう言って帰りに手渡された ケーキ屋の箱には いつ仕込んでおいたのか、 細いメタルのブレス時計。 高価であるのが一目で判ったから 机の一番奥の引き出しに そっと仕舞って鍵をかけた。
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