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メロン
広い玄関の片隅に
男物の革の靴。
(へぇ・・・まだ続いて・・・)
驚きとも呆れとも言えない
一瞬の戸惑いをさせる革靴。
見て見ぬふりで、上がって
すぐ右隣の洋室に入ると
習いたての辿々しい
ピアノの音が幽かに・・・。
「新規の生徒さんですか?」
千帆が尋ねると
「今年もお断りをたくさん
いれるくらいの応募だったわ。
やはり先生は有名人、フフ」
一番弟子でパート秘書を
している奥村が答えた。
先生・木暮雅子は
音楽大学の講師を勤める傍ら
自宅でも教授して二十年以上。
『音楽大学を受験したい(合格したい)
ならば、木暮教室しかない』
郊外の小さな町では定評だ。
千帆も以前は習っていたが
音楽大学希望ではないから
中学を卒業してやめた。
けれどもどうしたわけか、
厳しく小難しい雅子に
千帆は気に入られてしまい
大学に入ってからも
大学院に入ってるからも
『発表会なの』
『クリスマス会なの』
と、臨時バイトに
駆り出されていた。
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