メロン

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千帆の次には高校生が一人、 午後3時・・・ (夕暮れ前に帰れば・・・) 雅子の家の庭は広く リビングの正面に お誂え向きの、園芸道具を 仕舞ってある納戸小屋がある。 小学生の頃、待ち時間に 友達とカクレンボをしたから 中の様子も、千帆は知っていた。 「さようなら」 と、言っておいて 防音室の扉が閉まる気配が すると、こっそり・・・ 庭に向かった。 (あの小屋ならバレない) 単純発想で千帆は庭に入ったけれど、 リビングには、リビングの縁側には そこにいるのが当たり前みたいに 雅子より十ほどの年長の 品のいい、それこそ“紳士”の と言える男性が、長椅子に腰掛け、 英字新聞を読んでいた。 (しまった!) 思ったときには後の祭りで 「おや?忘れ物かい?」 紳士は千帆に微笑んだ。
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