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その日の出来事を
千帆は誰にも話さなかった、
母親はむろんのこと、
“パトロン”などと言った
友達なんかには当然
話す気はしなかった。
誰かに話すと・・・
自分が“悪”になるというか・・・
ひっそりと守られた
あの、甘い空間を
壊してしまいそうな気がして、
千帆はそれが怖かった。
千帆の口の堅さが幸いしてか
雅子は千帆のレッスンを
いつも一番最後にして
あの“紳士”のいる日は
リビングへと招いてくれた。
「神戸に出張だったんだ」
そんなことを言いながら
“紳士”はミルクティーを
千帆に振る舞う。
ここでの雅子は穏やかで
いつも以上に美しかった。
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