プレゼント

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翌週、男はカサブランカを 腕いっぱいに抱えて ・・・やって来た。 花に負けない女の香りは しつこくないムスク。 身体のラインの美しさを 強調する部屋着が 男を“足留め”る。 “身体”で始まった仲だもの、 卑しいことなど百も承知で 男は女の身体に手を伸ばした。 こんな男なのだ、 最後と決めた夜ですら 自分を求めるだろうことは 百も承知・・・いやむしろ その卑しさを引き出すための 今夜の装い・・・。 “最後”という言葉は 淫靡を引き出しのに うってつけの麻薬。 「それじゃあ、元気で」 男は背中を向けた。 女が見ていたのは花瓶、 靴を履く男の背中、 途端に憎しみが湧いてきて 女はカサブランカを宙に 降らせて、花瓶で男の頭を一撃、 ・・・あとは壊れた人形みたいに 白い花を真っ赤に染めながら 何度も何度も男の頭を 打ち続けた。
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