冬の篝火

2/3
前へ
/485ページ
次へ
 「大丈夫なのかい?   一泊なんかして」  「主人?お友達と旅行って   言ってあるの、こう見えて   私、信用あるのよ、家庭では」 些か信用ならない、何故なら こうして他人の亭主と・・・だ。 (いや、麻衣子の社内の評判はいい。  たまたま俺とこうなったんだ、  浮気など、亭主は疑ってはいまい) あれこれ考えながらも 半年以上に渡る麻衣子との、 ちょっした旅の夜、 いつもの時間に追われるときよりも 熱くなったのを思い出した。 長良川では若い者たちが 花火をあげて、一頻り歓声。 その声の合間合間に 麻衣子の  「私も・・・何度もぉ」 女の大輪をひらきながら 不適切な歓声をあげていた。  「こんなに“いい”身体なら   御主人は君に夢中だろ?」 僕が囁くと  「結婚して何年も経つと   女は飾りみたいなものよ」 麻衣子は寂しげに笑っていた。 妻の留守の夜、 つまらぬ思い出に浸った夜。
/485ページ

最初のコメントを投稿しよう!

328人が本棚に入れています
本棚に追加