汐  時

4/4
前へ
/485ページ
次へ
瀬田の車から降りて 真っ直ぐ帰る気にもなれず 家とは反対側の商店街へ、 和香子は足を進めた。 あらまし店は閉まっているが 酒を呑ませる店は少し賑やか。 瀬田という船から降りて 気怠い身体に  (夜風が冷たい) 身が震えた。 『子供を送る』 瀬田の一言に腹が立って (電話でもして家庭なんか  転覆させてやろうかしら) 少し本気の冗談を空想しながら 商店街を歩く和香子が、 不意と留めた店先… 53962595-90d2-4217-97c1-cb1516f68d17 猫が、可愛いハウスの前で 店主の片付けを待っていた。 また風が通りを抜ける…。  家…待ってくれる者…     今夜はそれが…       やけに……  やけに羨ましい和香子だった。              ー 了 ー
/485ページ

最初のコメントを投稿しよう!

327人が本棚に入れています
本棚に追加