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瀬田の車から降りて
真っ直ぐ帰る気にもなれず
家とは反対側の商店街へ、
和香子は足を進めた。
あらまし店は閉まっているが
酒を呑ませる店は少し賑やか。
瀬田という船から降りて
気怠い身体に
(夜風が冷たい)
身が震えた。
『子供を送る』
瀬田の一言に腹が立って
(電話でもして家庭なんか
転覆させてやろうかしら)
少し本気の冗談を空想しながら
商店街を歩く和香子が、
不意と留めた店先…
猫が、可愛いハウスの前で
店主の片付けを待っていた。
また風が通りを抜ける…。
家…待ってくれる者…
今夜はそれが…
やけに……
やけに羨ましい和香子だった。
ー 了 ー
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