5人が本棚に入れています
本棚に追加
「今後のことを考えると、邪魔でしかないですな」
「ああ、そうだ。奴は頭が良すぎた」
「そうですな」
「そして、柔軟性がなかった。非常に惜しい奴よ」
「――左様ですな」
結局、本音は傍に欲しかったのだろうと忠勝は思う。しかし、それを認めてしまうと、徳川の世は永遠に訪れない。
ここまで、織田、豊臣と我慢の時代が続いた。ようやく転がり込んだ千載一遇の機会だ。ここで勝つ以外の選択肢は存在しない。ついに、家康が頂点に立つのだ。
「消し去ってやる。秀吉の亡霊共々な」
「――はい」
認める点があるからこそ、最も嫌う相手。それが石田三成だ。ああ、なんと口惜しく憎々しいことか。
互いに認める天牙ありつつも、それでも嫌いな両者の戦い。1600年。関ヶ原の戦いが始まる、ほんの僅か前の時間の物語――
最初のコメントを投稿しよう!