合戦前に思うのは

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合戦前に思うのは

 ついにこの日が来たかと、まだ見えない向こう側を見つめて石田三成は複雑な気分になる。  夜明け前。関ヶ原に広がる朝霧を見つめながら、この歩が来なければ良かったのにと、何度思っただろう。  いや、豊臣秀吉が死んだ瞬間から、この日は決まっていたのだろう。それはなんとなく理解している。結局、自分は徳川家康と相容れることがないのだ。  深謀遠慮、策謀家の家康を三成は嫌っている。常に自分が上に立とうとするその姿勢が大嫌いだ。この平和な世は、秀吉様が築き上げたからこそ可能だったのだと、何度も反発してしまう。  もちろん、その政治手腕は認めるより他ない。戦に関しては、彼の足元に及ばないことだって理解している。でも、だからどうした。他は認められない。  大体、豊臣の代を支えるために粉骨砕身、難しい問題を調整してきたのは自分なのだ。その成果を何一つ認めないような態度は腹が立って仕方がない。 「嫌いだ。あんな狸親父」 「おいおい、こんなところに来てまで文句かい?」  そこに周辺の見廻りを終えた島左近が、呆れた調子で声を掛けて来た。それに、三成は冷たい視線を向ける。 「今から戦い、排除する相手だ。どう言おうと勝手だろ?」 「はいはい。最後まで素直じゃないってことですね?」 「何だと!?」  その減らず口に、三成はむっとする。そもそもこの男、自分に仕えたのも気まぐれのようなところがある。だからいつもこんな会話になってしまうのだ。 「殿は、家康殿を嫌っているのは事実。でも、時代が違えばどうでしょうね?やり方で解り合える部分があったら?今みたいに嫌い一辺倒でいられますか?」  左近は本音を漏らしたらどうだと挑発してくる。それに、三成は煩いと手を振って追い払う。 「考えても仕方のないことだ。そんな夢想、戦の前に要らん。この戦の先に立っている奴が正しい。それだけだ」 「――」
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