7.大人の演技は、女の子に

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「こっち。エレベーター乗ろ」  実夏に促され、僕と智也はソファーから立ち上がった。そして、そのまま実夏の後ろに続いた。なんだか僕と智也が、実夏の弟みたいだなとも思ったが気にしないことにした。  エレベーターに乗り込むと他の客も同乗していた。実夏は「7」のボタンを押した。  ゆっくりと上昇していく感覚を足に感じながら、僕は笑みが漏れそうなことを堪える。横を見ると智也もニヤけそうな顔をしていた。僕の前に立つ実夏の顔はわからない。  七階に到着し、まず実夏がエレベーターを降りた。続いて智也、そして僕が降りる。  実夏は右と左を見回してから、右側に歩き出した。「710-725」と書かれた看板が壁にあった。おそらくあれを見て判断したのだろう。  実夏は部屋の扉の番号を一つ一つ見ながら歩いていく。僕と智也も続く。 「何号室?」  智也が尋ねるのと同時に実夏は立ち止まった。実夏は「721」と書かれたドアを指差した。 「ここ」  そう言うと、実夏は青い表面の薄いカードキーを取り出した。そして、そのカードをドアの横にある差し込み口に差し込んだ。  カードが読み込まれ、青いランプが点いた。同時に、ドアのロックが外れる音がした。  実夏はカードキーを抜き、ドアをゆっくりと開けた。  ドアを開けると自動的に部屋の中に明かりが点いた。絨毯が敷かれた部屋の向こうに綺麗にシーツで包まれたベッドが三つ並んでいた。整理された部屋だった。  実夏はカードキーをドアの横のカードキーを収める場所に入れた。    僕たち三人は円陣を組むようにしてお互いの顔を見た。そして三人とも両手を挙げた。 「ぃやったー!!」  遂に僕たちは三人だけでホテルに辿り着くことができた。その喜びを三人でわかちあった。  シャンパンファイトでもしたい気分だった。    
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