1.終わりは、突然に

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1.終わりは、突然に

 真夏の陽射しが痛い。額から流れる汗が止まらない。  しかし、そんなことに構っている暇はない。  残された時間は少ない。  あと一点取らなきゃ。あと一点取らないと、追いつけない。  早く、早く。パスが欲しい。 「陽!」  僕を呼ぶ声と同時にボランチの伸弥の右足から糸を引くような一筋のパスが出た。  僕は敵ゴールに背を向けたまま、左足でトラップする。  すぐさま前を向き、フォワードの智也がどこにいるかを探す。振り向くまでの間に、視界の片隅に智也が見えた。僕の目が智也を捕らえる。  相手の二番にマークされているようだった。  今、ここでどんなパスを出してもきっとあの二番にカットされてしまうだろう。  どうするか……?  と、僕がパスのタイミングを探す間に、七番が立ちはだかった。  前半からずっと僕をマークしてくる奴だ。こいつを交わすのはちょっと難しい。ドリブルで抜こうにも絶妙な距離感で僕の前に立ちはだかる。今日は、この七番に攻撃の起点を塞がれている。 「しつこいなぁ……」  思わず声に出た。僕はボールを一度跨いだ。七番はこのフェイントに引っかかる様子もなかった。そんな駆け引きの間に「六番が来てるぞ、陽!」という伸弥の声が聞こえた。  まずい、ボールを持ちすぎた。そう少し後悔したその時だった。 「陽! こっち!」  左ナナメ後ろから声が聞こえた。サイドバック潤の声だ。  その声の後に、潤が僕の左を駆け抜けていくのが見えた。オーバーラップしてくれているのだ。さすがキャプテン。僕は心の中で叫び、僕は迷わず潤へパスを出した。  七番が、僕のパスを目で追うのがわかった。僕から注意が逸れた。  ここだ!  心の中で叫ぶと同時に、僕はパスを出した方向と逆である右側を走り抜ける。七番はすぐには僕に追いつけないはずだ。 「潤!」  僕は右手を挙げて叫んだ。それに気づいた潤が僕へとパスを出した。ボールは僕とペナルティエリアの間に転がっていく。  トラップする直前に智也の位置をもう一度だけ確認した。まだ二番が智也に付いている。  大丈夫、なんとかなる。
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