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僕はトラップして中央突破を図る。二番の注意が僕に向く。一歩、二番の足が僕へと進む。
かかった。
僕は右へドリブルを入れた。横滑りするかのように。何かしらの危機感を感じたであろう二番もスライドする。まるで鏡に映したかのように僕にあわせて動く。優秀なディフェンダーだと思う。一対一の戦いならば。
でも、これは一対一じゃない。
僕は自分の右足に力を入れて急ブレーキをかける。僕の身体は止まるが、相手のセンターバックはすぐに止まることはできず、身体が流れた。
それを見てから僕は間を置かずに左足で軽くボールを自分の前に蹴り出し、すぐに右足を振り切り、グラウンダーのパスを出す。
二番はパスをカットしようと右足を伸ばしたが、流れたままの身体では意識は向いても、身体は言うことはきかない。その足は届かない。
このパスに反応できるのは、智也だけだ。
二番が伸ばした足の先をパスが抜けていく。二番の裏側に抜け出した智也だけが駆け込む。
相手キーパーもパスに反応して前に出た。
しかし、智也の足が一瞬速かった。智也はダイレクトでシュートを打った。
そのシュートはキーパーの右を抜けて、鮮やかに決まった。
これで同点だ!
僕は智也へ駆けよろうとした。
その時だった。
主審の大きな笛が鳴り響いた。それはゴールを告げる笛ではなかった。
まさか? 僕が線審を見ると、線審はフラッグを掲げていた。
「オフサイドだ!」
誰かの声がした。オフサイド?
「ノーゴール!!」
主審の大きな声と同時に、僕は主審へ駆け寄った。今のがオフサイドだって?
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