1.終わりは、突然に

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「さっきオフサイドになったパス、すぐに出せばよかった。ズレちゃうと嫌だから慎重にいったんだけどさ……、智也はその想定じゃなかったんだよな。前半もチャンスでオレがシュートをポスト当てちゃったしな。両方うまくいっていれば四対三で勝ってたんだよな」  僕はできるだけ笑顔を浮かべてしゃべった。  わざとらしいのはわかってる。でもこんな沈んだ雰囲気にしてしまったのは僕のせいなんだ。だから僕ががこの雰囲気を変えなきゃいけない。  智也は大きく首を横に振った。何を否定しているのかはわからない。でもきっと智也は自分を責めてるんだろう。そういう奴なんだ。今ぐらい僕のせいにしてしまえばいいのに。 「もう少し冷静になるべきだったんだ。あそこでキレちゃいけなかった。オレがゲームメイクしてるんだから。冷静にゲームを見る力が必要だったんだ。今ならわかるんだ。もう一回、試合をすれば今度はきっとうまくいく気がするんだ」  今なら、いろんなアイディアが湧いてくる。あの七番や二番への対策だって湧いてくる。あと一点どころか、もう何点か取れるんじゃないかっていうぐらいに。  でも――、 「でも、もうオマエと試合することができないのが悔しぃ……な」  何を話せばいいのかよくわからなくなった。誰も何も言ってくれなかった。よくフォローしてくれるキャプテンの潤も何も言わない。  目の前の智也は俯いていた。何を考えているのかはわからなかった。  ただ、誰かの泣き声だけが、控え室に響いた。その声が少しずつ増えていったけれど、僕は泣くことができなかった。疲れすぎて、感情の回路が壊れてしまったのかもしれない。  僕は何も言わず、椅子に座った。
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