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真面目でしっかりしていて、大人っぽいところがある。
ことりのことをそう見続けていたが、恋愛においてはまだまだ子供で若葉マーク。
そんな当たり前のことを忘れていた様だ。
物理的距離が愛情に比例していると願いたい時期は、誰にだってあるものだ。
(自分のペースに巻き込み過ぎて、少々背伸びさせてしまったか……)
悪いことをした。
だが、それでも必死に自分について来ようと精一杯の、彼女のたどたどしさには愛おしさが込み上げてくる。
この俺が、こんなまどろっこしい恋愛にここまでいれ込む様になるとは……。惰性打算的な付き合いばかりだった自分が、いっそ懐かしい位だな。
もう一度彼女の頭を撫で回してみると、不思議とあたたかな気持ちに包まれた。
穏やかな気分。安心。
それは、女と付き合う中では一度も感じたことが無かった。
「本当、お前ってやつは……」
「え?」
「いや。何でもない。ショーが終わって混む前に他も見るんだろ?」
「……うん」
いかんいかん。考えを口にしたら色々歯止めが利かなくなりそうだ。
彼女の純粋で真っ直ぐな気持ちをダシに、まだ自分の恋愛ペースに持ち込もうとするのは流石に宜しくない。少し自重せねば。
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