56人が本棚に入れています
本棚に追加
冗談めかす、というのはこういう風にするのだと模範を見せてやった。
ことりは笑う。
ふにゃり、と照れ臭そうに頬が赤らみ、緩む。
そうだ。
そんな顔が、いい。
寂しい目はさせたくない。
(……なんか必死だな、俺――)
そう思うと、僅かだが悔しい気にもなり……。
「……糖分補給か。そうだな、それは名案だ」
「ん?――っ!!」
彼女の頭を強引に引き寄せ、甘ったるそうな口唇を舐めてみた。
やはり甘い。
メープルの香りと、ミルクの糖度。
もう少し味わえば、自分の舌にも甘さが移る。
「……んっ」
「うわ……あっま」
「っ、先生! ちょっとここ……人前だよ」
「だな。でも、いつも隠れてばっかりじゃ、鈍るだろうが」
「もうっ! なにが!?」
真っ赤な顔で周りを気にすることりを眺め、満足。
よしよし、悔しさはこれでチャラにしてやろう。
(こんな顔が見れるなら、必死も結構悪くないってことで……)
最初のコメントを投稿しよう!