57人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「いいの? また来ても」
「当たり前だろ。何言ってるんだ、ことり? お前……昨日から少し変じゃないか?」
昨夜の電話で感じた違和感やら、今日の一瞬の表情……、よくよく考えればどうも解せない部分がある。
ハッキリ確信は無かったが、それでもあえてそう聞いてみた。
「だって……」ぼそりと喋り出すことり。
やはり何か訳があるらしい。
「先生がいなくなる日、初めて聞いたから」
「は? 俺が学校からいなくなるのは、ことりも前から知ってるだろう?」
「だけど、こんな早くだなんて知らなかったもん……」
「怪我入院した教師の代わりだぞ。期間としたら長いくらいだ」
「…………」
揺れるクラゲを見る彼女の瞳もまた、揺れた。
反射する水の輝きがそこを濡らすように戯れ、
「先生がいなくなったら、全部終わっちゃうのかな……って思った」
ことりは、切ない音を吐き出す。
思わず溜息――。
「馬鹿か? ことりは。何言いだすかと思えば……。そんな事ある訳ないだろうが」
「……本当?」
「お前なあ……。俺のこと、教師期間の間だけ女生徒を喰って弄ぶ非情男だと思ってた訳?」
「そーじゃないけど、」
心底からの安堵が、ことりの目許と口許に現れた。
何かを言いたげに唇が僅かに動く。
次の言葉を待つ俺と一瞬戸惑う彼女は、刹那静止した。
最初のコメントを投稿しよう!