恋と教師と秘密の関係

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でも、そうさせてしまっているのは俺の立場のせいでもある訳で。教師と生徒である以上、解決されない問題でもあるのだ。 “教師生徒という秘密にしなければならない関係性さえ無くなれば、何の心配も無し” そう先を思って深くは考えない俺とは違い、ことりは今現在だけを深く考えて悩んでいる。 だからこそ、終わりが見えてきた教師の時間に嬉々とする自分とはズレがあるのだろう。 「私の世界って、家族と友達と学校だけでしょ」 ことりは、ガラスの向こうで浮遊する半透明の生き物を目で追いながら呟いた。 「でも、先生は違うんだよね。そこに仕事とか信用とか、無くしちゃいけないもの沢山あるし……。私のせいでそれ壊しちゃ大変だ……」 「そんなことまで考えてたのか?」 「当たり前じゃん。……ふふっ、なーんてね! そんなことも考えるけど、本当はもっと単純で子供っぽいことばっか」 「?」 「私、先生のこと全部知らないもん。学校やめたら、他にも違う先生の世界があって、私の知らない日常があるんだな……って。そう思ったら何かちょっと複雑。一緒の学校にいるのに、知らないことだって沢山ある」 「ことり……」 「離れ離れになったら、知らないことがもっと増えて、それが壁になっちゃう気がしちゃった」  
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