恋と教師と秘密の関係

19/19
57人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
ただ素直に、思いのままに言葉を繋げる。 「なぁ、知ってるよな。ライナス少年。安心毛布が手離せない」 「うん。先生が課題に出したマンガのキャラクターでしょ?」 「今のことり、なんかソレみたいに見える」 「えっ!」 「俺は毛布じゃないけど。ことりに執着されるなら歓迎するよ」 「ちがっ! これは……!」 慌てて手を離す姿に、柄にもなく胸は高鳴りを。 声は、笑いが堪えられなかったため弾んでしまっていた。 「そう言えば、読みたいって言ってたよな、漫画。貸してやる……部屋まで取りに来るなら」 「行くっ!」 「………」 「……あれ? 先生?」 「……即答って。お前なぁ……少しは察しろ、色々。そして戸惑え」 そんな嬉しそうな顔はしない方が良いと思うのだが? しかし、甘えることを覚えた今日のことりに、警告など通用しないのだ。 安心毛布を求める一途な執着は、何よりも恐れ知らずな直球の誘惑だったりする訳で。 まんまとそれに嵌った俺は、教師期間満了まで絶対的に隠し続けなければならない、それまで以上の秘密を彼女と共有する事に。 糖度高めな、その日の記憶……――。 二人の関係は大きく変わった。 そして、火曜日。 甘い記憶を思い起こさせる、誘い文句のきっかけともなった補習課題を生徒が提出に来る度に、俺はひとり英語科準備室で、己の加減知らずさを恥じる事になる……。   
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!