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「やらかしたっ…」
今朝、秀明の口から聞こえてきた。
幼なじみということで、朝はバッタリ遭遇したら一緒に登校する。という無言のルールがあった。
だから、今の秀明は昔となにも変わらない、幼なじみ。
相手はいつだって私のことをそう思ってる。
「どうしたの??また宿題忘れてたとか??」
「いや、ちがくて…」
「なに?」
「今日、隣の岩切に借りた教科書返えそうと思ってたんだけど…」
「何の教科書??」
「公民…」
「あーそれなら私の貸すよ。今日社会ないけど学校にあったと思うし。」
「マジかよ天使か??女神か??凜香様か!?」
「後ろのひとつしか合ってない。前の二つは彼女に言いな。」
私は時々、彼女いじりをするようになった。
そうしたら、大方秀明は苦しいような困ったような照れたような笑いを浮かべる。
それは、私が苦しいだけで、誰が得するわけでもないんだけど。
私がかわいいなんて、言われる資格はもうないんだ。
今は、好き嫌い関係なく、平和で、無垢な、"幼なじみ"のまま。
この状況が、いつまで続くんだろうって、ずっと思ってた。
1ヶ月もこんな感じなら、ずっとこんな感じなんだろう。
そんなことを考えていたら、自転車に気づかず、正面衝突しそうになっていた。
「危ないっ!!!」
「…大丈夫??」
「大丈…」
目の前が、秀明でいっぱいだった。
近くで見れば見るほど、好きが溢れてきそうで。
気づけば、目から液体が零れた。
「ごめっ…」
涙を必死で隠しながら、ひとりで学校へ行こうとすると、不意に秀明が、
「待てって!!」
と、手をつかんだ。
何で、そんなことをするの
そんなことされたら
変に期待して
私が傷つくだけ。
やっぱり秀明にとって私って特別なんじゃないかって
自惚れてしまうから
もう、
「彼女がいるのに、思わせ振りなことしちゃダメだよ…」
諦めようって。
強く思った。
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