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俺、ロジーク・オルト・グラストーンは9才になった。俺は父親譲りの青髪が生えてきて色々な色の髪があるんだろうなと思い興奮したが未だにカラフルな色の髪を両親の他に見ていない。
9才になるまでの間に、色々なことを知った。先ず、この世界はやはり科学という概念がなく、魔法学が発達していること。次に、金属等の加工する技術はこちらの方が優れていること。そして、魔法には物質を操る“元素魔法”と精霊という概念存在に力を借りる“精霊魔法”、生活を豊かにする“生活魔法”、情報等を集める“知覚魔法”、自らのイメージを生物として具現化する“召喚魔法”の5つがあること。それとグラストーン家は伯爵位にあるということ。
──以上が俺が9才までに知った内容だ。
「これは……もしかしたら!」
俺は“あること”を閃いた。
この世界の金属の加工技術と物質を操る“元素魔法”、これらを組み合わせて銃や爆弾が作れるのではないかと。
「多分、爆弾の方は元素魔法だけでなんとかなるんだよな……」
爆弾は例えばTNTは“2,4,6-トリニトロトルエン”といってニトロ基が3つ結合したトルエン(分子式:C7H5N3O6)を475℃で発火させることで爆弾として使用できる。もちろんピクリン酸というものも有名だがこちらの方が知名度はダントツだろう。
しかし、銃の方については鍛冶屋の伝手があるかどうかも分からず作れる見込みがない。
(銃の方は先送りだなぁ……少なくとも、家を継いでからになるかなぁ……?)
──そして気づく、俺はまだ魔法を覚えていなかったことに。
「先ずは魔法の習得だなっ♪少なくとも元素魔法さえあれば毒とかも作れるし♪」
俺は上機嫌なまま、父親のカルボンのいる書斎へと向かった。
「父上、お願いがあります!」
「なんだ、急に?」
パパンは不思議そうな顔でこちらを見ている。よしっ!初めてのお願いだ!
「僕に魔法を教えて下さい!」
俺は思いきって土下座しそうな勢いで頼み込んだ。あれっ?なんかパパンの表情が固まってるぞ?
「なっ!まだ早いッ……!」
俺はしゅんとした表情をつくってみる。
「あっ……ち、違うぞ!私はまだ9才のおまえが年齢的にまだ早いと……いや、周りの子供もまだ魔法を覚えている者はいないと言っているのだッ!少なくとも学園に入学してから──」
何度も言い直すパパン。表情がころころ変わって面白い。そこで俺は決めにかかる。
「ですが父上……貴族たる者、領民を守るために率先して前に出る必要があります!」
「ぐふぅっ!!」
9才の子供がこんな言葉を言うとは思わなかったからか、パパンは胸を押さえて蹲る。
「い、いいだろう。魔法の先生を呼んでやろう。」
精一杯父親の威厳を保とうとしているが、そこには威厳の一欠片もなかった。パパンは少しもニヤついた顔を戻せていなかったのだから……。
(パパンよ、それの表情はむしろ滑稽に見えるから……)
因みに俺は家の教えの上、一人称を僕にして親を呼ぶときは父上、母上と呼ぶように心掛けている。
──それなのに、威厳の一欠片もないパパンを見て俺はこうはならないようにしよう割と真面目に思った。
「やっほーっ!!」
数日後、パパンが呼んだ魔法の先生が家にやってきた。
──言い忘れていたが、両親の家はそれはとても大きな屋敷だった。そしてその家の広大な庭にローブを羽織った女の人が立っていた。
「今日は来てくれて感謝するよ。ライラ嬢」
「この子が私の生徒?」
(うおぉぉぉぉぉ!ターコイズの髪キター!!)
ライラ嬢──とパパンに呼ばれた女性は十歳くらいのターコイズブルーの髪の女の子だった。嬢と呼ばれたことから何処かの貴族だろうか。
──そしてここで、衝撃の事実が告げられた。
「ここに居るのは十日の間だけだけどよろしくね、ロジーク君!」
(十日だけぇ~)
俺は十日だけというのに「聞いてなかったぞ」という視線をパパンに向けた。
「これは……?」
俺はライラ嬢に魔法を教えてもらい始めた。そして最初にこの丸くて透明な水晶を見せてきた。
「これは“魔力測定器”といって魔力を調べてどの分野の魔法に適性があるか調べるための物よ。取り敢えず、これを両手で持って」
そう言われて俺は“魔力測定器”とやらを両手で持ち上げる。かなり重い。いや、5才児の身体だから仕方ないか。
「水晶は……っと、水色だから“元素魔法”と“生活魔法”だねっ♪」
笑いながらライラ嬢は俺に話かけてくる。因みに“魔力測定器”は“元素魔法”を白で、“精霊魔法”を黄で、“生活魔法”を青で、“知覚魔法”を緑で、“召喚魔法”を赤で表し、複数の魔法適性がある場合は、それぞれが混ざった色になる。
つまり俺は、白+青なので“元素魔法”と“生活魔法”に適性があるということだ。
「それじゃあロジーク君、魔力を巡らせて」
「……?」
俺は魔力を巡らせるということをどうやればいいのか分からなかった。
「魔力を巡らせるというのは、身体を流れる血液を外側に広げる……みたいなイメージなんだけど、私は……」
俺はライラ嬢のイメージ通りに意識を集中させる。あ、これが魔力か?赤血球みたいに粒子が移動している感じがする。
「このつぶつぶみたいなのが魔力ですか?」
「えっ!?もう分かったの!?」
どうやらこの先生は最初に出来なくても仕方ないことをやらせようとしたらしい。まあ、俺は直ぐに出来たけど。
「私だって出来るようになるのに3週間はかかったのに……」
3週間かかったとか聞こえたけどライラ嬢のためにも聞こえなかったことにしておこう。
ライラ嬢は貴族のはずなのにグラストーン家の屋敷にお世話になるらしく、昼食を摂ってからも夕方まで魔力を教えてくれた。
──そして、夕食時にも食卓に椅子を並べて一緒に夕食を摂った。
困ったことに就寝時も、何故か俺は抱き枕にされていた。この9才児の身体にはまだ性欲など無いが、精神年齢が前世は30歳手前ぐらいまで生きていたのでとても落ち着かない。おまけにライラ嬢から石鹸の良い香りがするせいで、落ち着かなさが倍増だった。少しはこちらの事も考えて欲しい。
──結局、あまり眠れずに翌朝、隈が出来ていた。
なんだかんだあって9日が経過してライラ嬢のいる最終日には俺もすっかり元素魔法や生活魔法の基礎的なことは全部出来るようになり、天狗になっていたところをライラ嬢に叱られた。
「まだ基礎しか覚えてないんだから天狗になっちゃだめよ」
と言われたのをよく覚えている。
そして今日は最後の晩餐のような勢いで夕食は盛大なホームパーティーを催すそうだ。ただその前に両親にお願いすることがあるんだった。
──9日目の昼にライラ嬢からこんなことを言われた。
「ロジーク君は天才だから、その才能を無駄にしちゃだめだよ。学園に入学するべきだよ!私だって学園の4年生だし……」
このことを言われた時は「学園ってやっぱりあるのか……」と思いもしたが、実際に俺はもっと魔法について知りたいからな。
そしてこの面子での“最後の晩餐”は始まった。
家族一同に食事を楽しみつつ団欒の時間も楽しむ。しかし、この空間は何故か落ち着かなかった。
──そうか、そういうことか。俺は明日の朝早くにライラ嬢がここを去るからそれが嫌だったんだ……。子供の良くある“依存”ってやつなのかもしれないが、俺がライラ嬢に惚れているのかもな。
「父上、僕は学園に入学したいです!」
──俺は真面目な顔でパーティーを楽しんでいる両親に頼み込んだ。
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