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12話 学園編一年目Ⅸ
俺はジン先輩の遺体を確認していた。何故ならばジン先輩と戦っている間、彼は伝言を伝えにきた男と同じく砂を身体中から吹き出していたのだから。先ほど神様が言っていた【鬼砂族】に関係があるのかもしれない。
すると、ジン先輩の遺体には奇妙な“札”か胸に──それも心臓に近いところに貼られており、札には字が崩れていて読み辛いが【鬼砂装符】と書かれていた。
(お札ってことは陰陽師か何かかな……?)
装うということはつまり、鬼砂族の力に似せているということであるだろう。
「なるほど……裏で糸を引いているのは【鬼砂族】ということですか……」
(一番怪しいのは焦げ茶色のローブを身につけた男だろうな……。取り敢えずジン先輩が使った【暗黒雷】とかいう未知の魔法にも興味があるし、【鬼砂族】について少し調べてみるか……っとその前に)
──俺は磔にされていたポリメを鎖を元素魔法で切断して助け出す。
「──っは!えっ!?ここはどこ?ってろ、ろろろロジーク君!?」
すると、鎖が外れた瞬間ポリメの意識が覚醒した。ポリメのおどおどしているのもいつも通りだったが。
☆☆☆
──数日後、俺たちのクラスはポリメが誘拐されたことにより先生達の方でも話題になっていた。
「ロジーク君、改めてありがとう!」
とポリメに言われたが、その後が特に疲れた。
何故ならば──
「「「「「ロジーク君!」」」」」
「「「「「俺(私)達に魔法の活用を教えて下さいッ!!」」」」」
とクラスメイト全員にそう言われたからだ。こんなのは正直ごめん被りたい。でもこの世界では自分で自分を守れないとすぐに死ぬような世界だ。前世の専門的な知識はともかく、活用術くらいなら教えてもいいだろう。
「……もちろん、いいですよ」
俺はクラスメイトのみんなを鍛えることにした。
「おっと、その前に……皆さんは【鬼砂族】という種族を知っていますか?」
「?何を当たり前のことを……」
俺の言葉に反応したのはポリメの双子の姉、ラジカルだった。
「良かったら教えてもらえますか?」
「ん~私も詳しくは知らないんだけど大昔に滅んだ悪い種族……みたいな感じ?」
「なるほど……滅んだのですね?」
「うん、まあそうなんだけど……。みんな、【鬼砂族】って大昔に滅んだっていう話だったよね?」
「そうだな……。でもそれを聞くってことはロジークは何か【鬼砂族】について知っているんだな?」
ラジカルの言葉に反応したのは身長が高いことでとても印象に残っていたブロンズだ。
「まあ……そうなんですけど……」
「っとそれを言う前にその言葉遣いをどうにかしてくれないか?クラスメイトなのに他人行儀で何か違和感がある」
「……っ!?分かりま……えっと、じゃあ分かった。じゃあ話を続けるけど、ポリメが誘拐されたときに裏で糸を引いていたのが【鬼砂族】かもしれないんだ!もし違っていても、【鬼砂族】は今も生きている!」
俺はこの事件の背後に【鬼砂族】がいる可能性を皆に伝えた。
☆☆☆
「ふむ……それはたぶん間違いない。【鬼砂族】が裏で操ってるはず」
俺が紫色に光る鎖や【鬼砂装符】と書かれた札のことを伝えると、緑色の髪を掻き揚げながらグリコールはそう言った。……絶対、10才じゃないよね!?勿論、俺は10才じゃないけれども。
「【鬼砂族】は砂を操るのともう一つ、【暗黒魔法】というものを使うんだ。あまり知られてはいないけれど【暗黒魔法】は一応、精霊魔法の対極に位置するような魔法だからね……。精霊魔法を使う人間から言わせてもらうと“外道”といか言い表せないんだけどね」
「確かに俺も対峙していたとき、精霊魔法に似た魔法なのに精霊の力を行使しているようには見えなかった……!」
俺はジン先輩と対峙していたときのことを語る。
「ロジーク君、一人称が僕から俺になってるよ?」
ポリメが余計なことを言っているが俺には聞こえていない。……いや、気にしていないというのが正解か。
「ごほん、まあ概ねロジーク君の言う通りだよ。ただ一つ訂正すると、あれは【鬼砂族】が殺した人々の“呪い”だよ。要は【鬼砂族】が見つけた禁忌の魔法なのさ……」
(なるほど……呪いか。道理で前世の陰陽師みたいな札があった訳だ!陰陽術ってある意味、“呪い”だしな……)
「呪い……ってことは人々の怨念とか、そういう類いのものってことですよね?……どう対抗するんです?」
そう言ったのは赤髪ロングの女子生徒、フィフィだ。
「一度【暗黒魔法】をかけられたら、対処は出来ないよ……というよりも触れることが出来ないんだ……。触れただけで人間は死んでしまう」
とても辛そうな表情でグリコールは話を続ける。
「え?俺は普通に鎖を切断したぞ」
「ッ!!?それは本当か!どうやって!!」
グリコールが一気にまくし立てるが何故出来たのかは俺にも……あっ!!
───“害のある物質の抗体を下さい”って神様に言ったんだった!……思わぬところで役に立ったなぁ。この世界には前世にない物質があるかもしれないし……。それがたぶん呪いと呼ばれているのだろう。……ただ、神様云々これだけは流石に言えないが。驚かれる以前に──この世界にいるのかは分からないが、勇者とかに認定されそうで怖い。この世界には勇者と“祭り上げられる”者がいるらしいのだ。
「ごめんグリコール、俺にも分からない……」
「そ、そうか……。突然まくし立ててすまないな」
「あ、もし触れずにその鎖を壊したらどうなる?」
俺には前世の知識がある。結局、作ることは叶わなかったのだがあれで鎖を壊したらどうなるのだろうか?
「触れさえしなければ呪いは移らないから大丈夫だけど弓でも壊せないものをどうやって……?」
(良かった、これで今まで作れなかった“銃”が作れる……!)
「銃っていう遠隔攻撃用の武器を作るんだよ」
俺は平静を装って答えたが、やばい、もう待ちきれない!早く銃を実戦で使いたい!
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