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学園編一年目Ⅳ
入学式が何故か気持ちが落ち着かないまま終わり、俺はクラス分けで名前を呼ばれるのを待っていた。
「1組……レッド・デプス・ストロンチウム、ブチル・ジ・スクエア、etc.」
(それよりも、聞き捨てならない言葉が聞こえた気が……赤、深い、ストロンチウム……って炎色反応じゃねーーか!)
この世界の人々の名前は一体何故こんなにも科学的な用語が多いんだよッ!!?
──なあ……?神様よぉ……!?
「2組……ロジーク・オルト・グラストーン、グリコール・エテン・トゥワイス、アルゴン・レア・エイティーン、etc.」
俺の名前が呼ばれ、2組の生徒になった。
──またしても……グリコール!?アルゴン!?どれも化学関連の用語じゃねーーか!
炭素数2のエチレングリコールと18族、貴ガスのアルゴン、だから何でこんな用語ばかり人の名前にしたがるわけ!?今まで唯一まともだったのライラ嬢だけだぞ……家名はまともじゃないけど。
──まあそれはさておき、先導する2組の担任(?)の先生についていく。
その中には商店街で会ったポリメもいた。フルネームはポリメ・チェーン・リアクトと呼ばれていたな。ここでも用語が使われていた。生物学の用語ではあったが。やはりまともじゃないな、この世界。
──というかポリメはなんで家名があるんだ?
☆☆☆
先ず案内されたのは学園内にある聖堂たった。
「ここは神様にお祈りをする場所で、お祈りの他に治療院としての役割もあります。」
要するに前世でいう保健室と教会を合わせたものだろう。
──そういえば……。
この世界は回復魔法が存在しない。なのでこういった治療院は数多くあり、塗り薬等で時間をかけて直すそうだ。
まあ俺の場合元素魔法で傷を塞ぐが、人々は自分達の肉体を神様が創られた器であると考えられているらしいからな……。
次に案内されたのはカフェテリアだった。
学生寮にも食堂というものがあったが、ここは所謂“三時のおやつ”を食べるような場所なのだろう。このとき、“お昼はどうするんですか?”という質問を投げていた生徒がいたが、先生が給食が出ると答えたので危ないところだった。
そして最後、自分たちの教室に案内されて自己紹介の時間になった。2組の生徒は全員で16人だったので、この学園は1学年10クラスあるのだろう。
「先ずはグラストーン、お前からだ」
先生が指名してきたので俺は立ち上がって自己紹介する。
「僕の名前はロジーク・オルト・グラストーンです。使える魔法は元素魔法と生活魔法です。よろしくお願いします」
「次ッ!トゥワイス!」
先生に呼ばれて緑髪の男子生徒が立つ。
「はいっ、僕はグリコール・エテン・トゥワイスと言います!使える魔法は精霊魔法と知覚魔法です。よろしく!」
精霊魔法使い!初めて見た!!俺は目の前に精霊魔法使いがいることに興奮してしまった。
「次ッ!エイティーン!」
今度は金髪のガタイの良い──前世ではラグビーをやってそうな生徒が立つ。成長したらどうなるのだろうか。
「俺がアルゴン・レア・エイティーンだ!!」
(ぶほっッ!!)
“俺がガン〇ムだ!!”みたいな感じでガタイの良い男子生徒──アルゴンは自己紹介してて思わず吹きそうになる。
「次ッ!ペンタン!」
綺麗な赤色の髪のロングにした女子生徒が立つ。
「はいっ!私の名前はフィフィ・トリ・ペンタンです。使える魔法は召喚魔法です。よ、よろしく………」
最後は恥ずかしくなったのか、声が小さくなってる。かわいい。
「次ッ!リアクト!」
おっ?遂にポリメの自己紹介か?
「はい!私はラジカル・リプ・リアクトといいます!使える魔法は召喚魔法です!よろしくぅ!」
(あれっ?ポリメじゃない?)
よく見たらアルラウネではあるが髪の色がポリメと若干違い、赤紫に近い色だった。
「次ッ!リアクト!」
(えぇ……)
「え?わっ、私はポリメ・チェーン・リアクトですっ!使える魔法は精霊魔法で、です……お姉ちゃん……ラジカルのふたごの妹です……」
ポリメは精霊魔法が使えたのか、意外だったな。オドオドしているがまあ、仕方ないだろう。
自己紹介の時間はまだ長く続きそうだった……。はぁ、ちょっとだけ疲れたな。
「次ッ!ノナン!」
「ハッ……、ハイッ!」
猫の耳を生やした茶髪の女子生徒が立ち上がり自己紹介するが、驚いて縮こまっている。周りよりも小柄なせいか余計に小さく見える。
「すぅ~はぁ~……の、ノナンです。平民です。使える魔法は生活魔法と召喚魔法です。よ、よろしくおねがいします」
初めて貴族じゃない人の出番だったな。
「次ッ!シアン!」
「はい、俺の名前はブロンズ・ツア・シアンです。よろしくおねがいします」
……驚いた。こんなに容姿と名前が一致する人がいるなんて……。
ブロンズは全体的に色黒で身長が高く、なんというか……すごくブロンズだった。10才でその身長はアカンわ……。
──こんな感じで自己紹介が進み、全員の名前を覚えられた。
残りの8人は、
・フェルニル・ゼクス・アラニン(男)(橙色髪/知覚魔法、召喚魔法)
・アブソ・リラ・イヌリン(男)(黄緑色髪/生活魔法、知覚魔法)
・マイク・ロウ・アレイ(男)(灰色髪/精霊魔法)
・バイオレット・アイン・カリウム(女)(赤紫色髪/元素魔法)
・ケイト・アル・ルーデヒド(女)(金髪/精霊魔法)
・グアンニヒ(男)(銀髪/元素魔法、知覚魔法)
・アディン・エル・エース(女)(薄黄色髪/生活魔法、召喚魔法)
・クララ・ロスト・リジウム(女)(翡翠色髪/精霊魔法、生活魔法)
──という名前らしい。やはり、何かしらの科学的な用語が入らないといけないルールでもあるのか……?
「じゃあ最後に俺は2組の担任のツベルク・リ・クリン(緑色髪)という。よろしく頼む!」
(先生、あんたもか……)
──驚いた人は皆このような反応をするのだろうか、とも同時に思ってしまった。
自己紹介が終わると、今日はこれでお開きとなった。
俺も帰ろうとしてドアを開けた。──すると、入学式で話かけてきたブチルがこちらに気づいて近寄ってきた。悪い顔をしながらだったので少し警戒していると──予想の遥か外側の行動をしてきたので、対応出来なかった。
「おいおい~!どういうことだよ~っ♪この色ボケめ~!ライラ先輩と将来を誓い合うってどんな仲だよ~!」
わざとらしく大声で問い詰めてくるブチル。すると1組の女子生徒はニヤニヤと、男子生徒は“してやったり!!”みたいな顔をして俺の様子を窺っている。
──嫌がらせかよッ!!?
(あ、やばっ……!!)
(((((じーーーーーっ)))))
慌てて後ろを振り返るがもう既に手遅れだった。
──男女問わずこちらを凝視していたのだから。
「誰かこいつを縛り上げて尋問しろォォォォォ!」
1組の伯爵以上の貴族出身の奴らだけは凝視だけでは終わらずに縛り上げろなどと言う輩がいた。
「俺は無実だぁーーーーー!!」
唯一面識のあるブチルに視線を向けても彼は何も言わずに口元をニヤニヤさせて見ているだけだ。
──前世でこの世界は理不尽だとか不公平だとか言っている輩がいたが、一つだけ言わせてほしい。
“こ っ ち の 方 が 理 不 尽 だ ッ ッ !”
この後気づいたが、俺はなんと自分の素が出てしまっていた。
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