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「本当ですか、先生! この子、昔から何をやらせても出来が良くて自慢の息子だったんですけど中学校入ってから遊んでばっかりで心配だったんです」
確かにわが子を褒められて嬉しくない親はいないだろうが、こうもあけすけに自慢されるとは思わずにイツキは「はあ」と曖昧に頷くしかない。
謙遜を知らない母親が「もしかしたら有名大学も狙えるんでしょうか? 早稲田とか慶応とか」と身を乗り出してくる。
これにはイツキも流石に面食らった。
確かに有名ではあるが、そもそも法学部などが有名な私立大学なだけで、やりたいことも決まっていないと本人が言っている今ここで話し合うには非現実すぎた。
返答に困ったイツキは「あー、えー、そうですね」と手元の資料へ目を落としながら言葉に詰まる。
「母さん、もういいから」
かすれた声が低く制する。
高橋はうんざりしたように床を睨んでいた。
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